ニューハーバー/草野大悟2
 
た。
 担当の検事は、西橋とそう年も違わないような柔和な感じのする男だった。
 供述拒否権及び弁護士選任権を型どおり告げたのち、検事は調べを開始した。
「西橋さん、警察の調べによると合意の上だった、となってるけど、ほんと、そうなの?」
「ええ、間違いありません」
「ふーん、合意の上ねぇ」
「酔っ払った彼女をタクシーで送って帰る途中、彼女が誘ったんです」
「彼女が……ですか?」
「そうです。彼女はなんと言っているんですか?」
 検事は、それには応えず、以後の状況を詳しく取調べた後、
「口述(くじゆつ)」と、検察事務官に告げて立ち上がった。
「私は、東南大学法学部教授の職にある者
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