ニューハーバー/草野大悟2
いだ。先程の男だった……。
この夜から、智子の体に男が住みついた。男の名前は結城といった。後になって野原が教えてくれた。
結城は、初めて会ったときと同じように、いつも無表情だった。他の男たちがドンペリやロマネコンティを飲むのを、暗い目をして眺めていた。
結城の中の雄が智子の中の雌を目覚めさせた。セックスのとき智子は一匹の雌になり、叫び、求め、真っ白になって果てた。
結城の体には多くの古傷があった。一度その傷跡について訊ねると、彼は黙ったまま智子の乳首を指ではじいた。結城は、セックスの後、無表情な黒目がちの目で智子の瞳を見つめることがあった。どこまでも黒い瞳の中に、智子は吸い込まれて
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