ニューハーバー/草野大悟2
を跳ね上げた。その手に握られたカミソリが野原の左頬を切り裂いた。左の口角から頬骨まで白い筋がはしった。そこから血がしたたり落ちてくるのに、そう時間はかからなかった。
野原の油断だった。
野原は左手で左頬を押さえた。指の間から血が流れる。女の子がタオルを持って走って来た。受付の男が一一○番した。
男は、右手にカミソリを持ったまま野原に迫ってきた。野原の目がカッと見開かれた。
「てめぇー、殺してやる!」
「やってみろ」
野原は、落ち着き払って言った。
「ヤロー!」男が怒声をあげて、首筋を狙ってカミソリを振り下ろす。野原の体が右足を軸にしてクルリと回転した。男は、目標を失って前のめ
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