ニューハーバー/草野大悟2
 
てやろうか、との思いがよぎった。しかし、金で智子を買うような真似だけは決してやってはならない、そう思い直した。
「そうか。本当によく頑張ってきたね。ここではなんだから、明日にでも会社においでよ。詳しい話をしよう」
 翌日の午後、智子は野原の会社を訪ねた。会社は東海県随一の歓楽街、シャワーロードの中心にあった。
 社長室の黒い革張りの椅子に深々と座った野原は、「昨日話してたトモちゃんの借金、もしよければ、僕が業者と交渉して、法定利息内で返済しとこうか? 僕への返済は、無利子無期限でいいから。それに、どう、僕の所で働いてみる気はない?」と、訊ねた。
「えっ、ホントに? 利子無しでいつ返してもい
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