ニューハーバー/草野大悟2
時だった。その頃、智子はその店でホステスをしていた。
彼は、いつも三人の取り巻きに囲まれていた。一晩で、ドンペリやロマネコンティを何本も空にし、支払いは現金できちんと済ませて、迎えのベンツで帰っていった。
一年が過ぎたころ、野原の口から、高校の同級生であることを告げられた。そうか、とだけ思った。彼のことは記憶になかった。
「トモちゃんいろいろ大変なんだって?」
酔っていた。これまでのことを誰かに打ち明けたくて仕方のない時だった。ユタカとの出会い、彼の死、今借金が六百万近くまで膨らんでいることを一気に話した。
野原は、時折小さく頷きながら、黙って話を聞いた。一瞬、借金を全額払ってや
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