ニューハーバー/草野大悟2
ブルーシートの上で寄り添うように並んだ。両手首から夥しい血が流れる。
「岩野、血を床に流すな! 後は、岩野、お前に任せたぞ。智子、こいつらと一緒に野原の所に帰れ、いいな」、結城が平然と言った。
智子は、結城を見た。初めて見る朗らかな笑顔があった。
この人は、死にたかったんだ、きっと。
「俺は、ガキの頃から痛みを感じないんだ」という結城の言葉が、聞こえてきたような気がした。
顔を潰された両手首のない男の死体が上がったのは、その年の冬だった。根室沖で、タラバガニ底引き網漁をしていた漁船がそれを引き上げた。
道警は、司法解剖を行い、歯形や血液型、DNA等を徹底して調べた。しかし、それ
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