ニューハーバー/草野大悟2
 
国の挨拶がてら智子を訪問したのだった。裁判の後、大学を卒業して渡米し、ニューヨークで働きながら演劇の勉強をしていた、という。
「智子さん、あの時はほんとうまくいったね」
 遠山渚が言った。
「そうね。でも、DVDがあるって聞いた時は、正直、ヤバイ! と思ったわよ」
「そうそう、私も。結果的には良い方にいったけど」
 二人は微笑んでグラスを合わせた。
 西橋に侮蔑の言葉を浴びせかけられ、研究室を飛び出した智子は、東南大学学園祭の屋外ステージで、主婦を演じていた遠山渚を偶然見かけた。
 その演劇は、夫の浮気を知った主婦が、相手の女と自分の夫を刺し殺し投身自殺をとげる、といったよくある筋書
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