ニューハーバー/草野大悟2
いで、私が教えてあげるよ」と、智子の手を握った。
店を出た。そのまま牧場に帰るには二人とも気持ちが高揚しすぎ
ていた──。
大学四年の秋、智子は本田の子を身籠もった。「子供は絶対産まないで欲しい」。本田は、堕胎を迫った。卒業と同時に本田は北海道に戻り、それっきりなんの連絡もなかった。本田のことなどどうでも良かった。沙羅には毎年、年賀状と暑中見舞いを出した。必ず、「待ってるよ」、と書いた返事が届いた。
大学を卒業した智子は、地元の大手イタリアンレストランチェーン店『ブラマソーレ』に就職した
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