ニューハーバー/草野大悟2
 
した。
 半年が過ぎたころ、同じ職場の篠塚大輔から交際を申し込まれた。 篠塚は大学の二年先輩だった。職場懇親会の二次会で、『トリノ』というスナックに行った時、皆がカラオケに夢中になっている中で、隣に座った篠塚は智子の手を握りながらじっと瞳を見つめた。
 大学時代、剣道部の主将をしていた篠塚は、上段から打ち下ろす面を得意としていた。県大会で、個人、団体ダブル優勝を二年連続で達成し、その上長身の美形。女子学生が放っておかなかった。その彼からの申し込みである。智子は、有頂天になった。
 しかし、篠塚と付き合ううちに、彼が酷く愚痴っぽいことが分かってきた。
 小料理屋『火の鳥』で飲んでいたその夜も
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