ニューハーバー/草野大悟2
合わせた。バカラのグラスが金属の風鈴のような心地よい音をたてる。
「オーソ・ブッコ。仔牛すね肉の煮込みミラノ風でございます。ワインはバローロクラチコを選ばさせていただきました」
新しいグラスに注がれた濃いルビー色のワインは、スミレの花の香りがした。重厚で、渋みが舌に残る奥深い味わいだ。
「彼はね、ソムリエの資格を持ってるんだ。だからワイン選びは全部彼に任せてる。僕はワインのことなんかなんにも分からないから。いま食べているこのオーソ・ブッコという料理ね、イタリア語で『空ろな骨』という意味なんだ。詩的だと思わない?」
「詩的? うーん…そうかなあ? それより、ここの料理、ほんとにおいしい!
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