白鱗/島中 充
から聞いていたあの方法しかないと思った。
まだ暗い内に起き出し、ヤカンに油を入れて、火にかけ、水滴を落とすとジュウと音のするまで熱した。そしてその熱油を注意深く、二升の特大瓶に少年は注ぎ込んだ。ガラス瓶は、油を注ぎ込んだ深さに見事にピリッと音を立てひび割れた。底の抜けた瓶は丸い鋭利な切り口になった。鯉を傷つけないために切り口にゆっくりゆっくりヤスリをかける。ガラスをこする甲高い音、少しでも力が入るとガラスはピリッと新しい切っ先を作って壊れ、少年の指先をシュッと傷つけた。流れる血をシャツになすり付けながら、注意深く一回一回ヤスリをかけた。
底を抜いた瓶を抱いて少年は朝焼けの中
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