白鱗/島中 充
 
ように真っ白で鱗がキラキラひかり、目の赤いアルビノの鯉、白鱗がいた。少年は六十センチあるその巨鯉をいとおしく思っていた。生まれながらに色素が欠落し、真っ白であることに少年は強く惹かれていた。
 少年には血の繋がる者の中に複数の発狂する者がいた。もうすぐ自分も狂うかも知れない。すらりとした長身の姉もその一人だった。狂って、波打つ長い髪、薄汚れた服に包まれている悲しい姉。村の子供たちはお前の姉さんがまた素っ裸で、川で泳いでいたぞ、と少年をからかった。狂ってもまだ見事な泳法を見せ、深い川をひゅるひゅると白い蛇のように渡った。水にぬれると長い髪は黒々と輝き、恥毛はしっとり濡れ、白い肌は陽に照らされていっ
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