『サフランの髪飾り』/座一
車のことを知っていた。
毎年毎年、イナフはこの列車に乗り込み、どこかへ向かう。
マリークロッカスはイナフが一体どこに行くのか、ずうっと気になって追跡したいと強く思っていたのだが、どこで手に入れられるのかチケットがないのと、外見は透明だし、どう乗ったらいいのか、本当に目的地まで運んでくれる力はあるのか不安に思っていまいち追いかけてゆく勇気がなかったのだ。
イナフが居た。小道を歩いていく…。突風列車が、ちょうど、小道の終りに到着したばかりだった。チケットを握りしめてなお躊躇していたマリークロッカスは、その列車からするりと風に吹かれて散った紫の花びらにほおをなでられて気づいた。
突風列車はプライ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(3)