氷片に落ちるキャンディのエリザベラ/佐久間 肇
 
わたしの皮膚を食いちぎり
わたしの毛穴という毛穴から
わたしの開かれている穴の全てから
わたしの中へ 中へ 入ってくる
入ってくる
 
眼球を噛み砕かれ 鼻の奥の粘膜から耳の鼓膜を破り
または口から舌の血管を破って動脈や静脈の流れを辿り
喉を大量の蟻んこが塞ぎ 肺胞を一つずつ食い破り
大腸も小腸も噛み千切り 胃の中のものを食べ
骨をかじって 爪を押し上げて 蟻んこは出てくる

少女のとき 歌いすぎて 近所のおじさんに連れ去られそうになった
そのときから 歌を歌うことは おとこのひとをゆうわくする ことだと思った
おとこのひとをゆうわくしたら ダメだから 歌はもう歌わない
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