水面に垂らした絵具みたいに ほか3篇/きりえしふみ
 
くはすっかり思考と云うものを手放して
妄想とそれが招くこの息苦しい感覚の奴隷と化した
この病を癒すには
いまのぼくにとっては「気の遠くなるような年月」による想いの鎮火を待つか
きみからの優しい返答と抱擁くらいしか手立てはないのだが

きみを前にぼくの唇は快活な言葉を出なくさせ
微笑みさえ押し留めようとする
主人に不服従な家来のように

「きみのことが好きだ」
なんの変てつもない言葉がぼくの内面をぐるぐると巡る
目眩と吐き気が交互に または同時に生ずる
返品されたら立ち直りに時間を要する言葉
無防備にも差し出さないことには どうにもならないけれど

か弱げなきみは知っ
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