秋の歌/ハァモニィベル
、眼の前でKは見た。深々とした空間は下に長い。続々と生れ落ち、底へ底へ埋められてゆく……、垂れ堕ちた夢の一切が四歳の孤児の手のように夥しく芽吹いて、流れてきたオフィーリアの白骨に乳房を彫り上げる。咥えた乳首からアリアドネの糸を吸出そうとして。
*
エアロ・バイクの上に跨がって駆け抜ける日々が、いつも曖昧であやふやなまま過ぎてゆく。脱け殻になった記号が置き去りにされた景色は、ほどよく暖房の効いた場所に寝そべったまま、じっと、バスが来るのを待っていた。風に吹かれもせずに。/ある日、雨の降りしきる深夜、そっと抜け出して、濡れたアスファルトを踏みしめ置き去りに
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