丘/Giton
 
ツのボタンを外していた

その日からぼくはしばらく森へ行かなかった
校長が朝礼で、このあいだいらした大使はご都合で
家族ともどもお国に帰られたと告げた
行ってみると家は真新しく塗られたまま施錠され
少年像は無くなったままだった
ぼくは草むらの中でむなしく彼の匂いを探した

それから長い時間が経って、住民が減ったために小学校は廃校になり
校舎の跡は整地され、同窓会の便りも来なくなった
ある日坂の上を通りかかると、森はなくなって白い高いビルディングが
立ち並んでいた。駅から通じる地下街もあり人はおおぜいいたが
興味を惹くものは何もなかった

それからまたずっと時間が経ち、
[次のページ]
戻る   Point(1)