金型/はるな
 

まいにち目にわかるほど大きくなっていくのに、娘はきちんと娘のかたちをしている。一日にすくなくとも一度はどうしようもないほど叫ぶ娘を抱いて、鏡や暗い窓にうつる自分のすがたを見せてやると、泣きながら(あるいは泣き止みながら)手をのばしている。娘のからだはいつもとてもあたたかいので、窓がらすはすぐに、手のひらのかたちに火照るのだった。鏡をみがいていると、わたしの(そして夫の)足もとにあたるところ、いつもは汚れたりしないところに、ちいさくまるい手形があり、わたしは、わたしでないように笑ってしまう。
なんにも考えうかばないような疲れた体を横たえて、指をうごかして思い出すことは、たとえば九歳のころに初め
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