金型/はるな
 
初めてつくった詩集(メモ帳に穴をあけて、母が紐でたばねてくれた)、朝顔の鉢が青いプラスチック製だったこと、ケーキを焼いた金型のどのへんが錆びていたか覚えている、父が黄色い飾りのついた髪飾りを買ってくれた、晴れた日、自転車を漕ぐ影をじっと見ているときの浮遊感。
覚えていることがいろいろある。でも、なにを覚えているのか、思い出すまで思い出せない。髪を切ったのは、間違いだったのかもしれない。壁にきれいなテープで写真を貼っている。このあいだ通った台風のせいで、窓がずいぶん汚れてしまった。窓、窓は大切なものなので、きれいにしておかないといけない、窓、あるいは扉、もしくは鏡。夜と朝とでちがう窓たち、(もしく
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