精通/ただのみきや
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アタマ…… 黒髪の 人形のあたま 頭!
波紋を起こさないよう そっと寝返りを打つ
だが水は走り抜け一トンもある静けさに押し潰される
正気のまま氷嚢を抱いている
一年にも思えた 恐らく数分間
鼓膜のノイズが痛いほど頭いっぱいに響いて
だけど背中で感じる恐怖には上限がなかったから
私は全身に力を込めて振り向いた――
――そこに もう人形の姿はなかった
筋張ったままの安堵 思いは廻るが 白く疲れ果て
いつの間にか眠っていたのだ
私は昨夜の出来事を誰にも話さなかった
知られてはいけない そう感じていた
太陽の下では全てが掻き消される 陽射しは途方もなく私を
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