とりつくしまという名前の島での物語 オムニバス三篇/るるりら
 
 銀布のよう
車の走りは すべるよう
千の せいだかあわだちそうの群れが
金の花穂を 天に示しながらも
無数の腕を 一斉に わたしへ振っている

   いっておいで

大地ごと隆起した山々の上で
緑はさらに もくもくと萌え
雲は しだいにちぎれ 大空にそよぐ
過剰に飽和した部屋は 忘れて いいよ

   いってらっしゃい

高速で走る車の振動は ここちよく
うつらうつらと意識は遠のく
ぼんやりと瞼をあけると
山々にまたがる巨人の境地

  よく ここまで 来たね

ここは ヘブンブルーの空に
ビーナスピンクの溶け合いはじめた海と空
すべてのものが
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