風のはじまりをあなたは知っていますか?/木屋 亞万
 
できず二人の溜息が部屋で混じり合うだけだった。いろいろな男たちが彼女に何かを吹き込もうと、耳の穴に言葉を囁き込んだり、口を熱くふさいでみたりと、彼女を生命力にあふれさせる努力をしてみたけれど、彼女の内部は死滅しきっていて、何をしてもその荒廃を止めることができなかった。
 うつろな目でつくため息が、その部屋で起こる空気の流れだった。ため息をするとしあわせが逃げるという人もいるが、私はそのため息さえ彼女の濃縮された何かを感じ、ため息に満ちた部屋で彼女と静かに過ごせることがうれしかった。彼女がトイレへ歩くとき、小さなキッチンへ行くとき、起こる風がその部屋の数少ない空気の流れだった。彼女が動くたび、部屋
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