風のはじまりをあなたは知っていますか?/木屋 亞万
 
べていても彼女は何も言わなかった。そしていつの間にか、私もベッドにもたれながら眠ってしまうのだ。そんなとき、ふっと風が起こる気配がして目を開けると、彼女がベッドに座っていてこちらをじっと見ている。目と目があった瞬間に、くしゃりと顔を崩して笑うのだ。その美しい線が鼻に集まっていく崩れ方をみると、このままずっと学校に行かずにここにいられたらいいのにと思うのだった。
 私が彼女に会った時から、彼女はすでにほとんど失われていた。外側はうつくしく、みずみずしいのだけれど、その内側はぼろぼろに崩れ落ちて乾ききっていた。そのことを時折、彼女の目が私に訴えかけているように思えるときもあったが、どうすることもでき
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