人間の完成/まーつん
さに我を忘れて
そうしてあなたの声は
どれだけ多くの人に
見えない傷を残したろうか
誰かの胸に飛び込もうと
崖を這いあがり、谷を駆け下って
どれだけ多くの汗を、流したろうか
そうして
誰かの素肌に手が届いても
心にはなお隔たりがあり
絡み合う二つの体と
お互いの本当を
映さない瞳が
寂しい涙があった
私たちは皆
一滴の雫だ
それぞれが
雨の一粒となって
厚い雲から吐き出され
海の懐へと落ちていく
その孤独に震えて
宙に留まろうと
あがき、しかし否応なく
着水して、波紋を広
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