人間の完成/まーつん
 
を広げてゆく
 そして、海とひとつになる
 多分、それが生であり
 死なのだろう

 波立ちは一瞬
 気が付けば、
 あなたはいない

 でも、その瞬間の
 なんと豊かな
 永遠だったことだろう

 涙も汗も閉じ込めた
 雫がひとつ、跡形もなく
 水面にほどけて

 それでも
 海は穏やかなまま
 何もなかったかの様に


 あなたがいつか
 去る時がきても

 私はもう、
 泣きはしない

 己を抱きしめ、
 空を見上げ
 この身を雨に
 濡らすだけ

 あなたという
 命の雨で
 濡らすだけ

 その恵みが
 育む何か
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