人間の完成/まーつん
 
響く
 死の足音に怯え
 ある者は耳を塞ぎ
 ある者は耳を澄ませ

 生に満ち足りる者ほど
 還ってそれを冷静に見つめ
 残された時を、懸命に生きた

 生を浪費する者ほど
 不思議にそれを恐れて逃げ
 度々躓いては、生傷を負った

 死への恐れを通じて
 私たちは、誰かの痛みを
 我がものとすることを学び
 それを、共感と呼んだ

 そうしてあなたの手は
 どれだけ多くの人の
 見えない傷を癒したろうか

 あるいは己が内に
 優しさを求めながら
 見つからず悶々として

 時々襲ってくる空しさに
 生きる意味を問われ続けて
 もどかしさに
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