いちばんの孤独/佐伯黒子
る。いくつものことを忘れる。しばらくしてその状態を思い知り、渋々手を出す。他のことは進んでいない。でも確かに言えることは、彼はその中でもよくうちにやってきたと思う。顔を見ない日があれば不安になるほどに。私の日常はそうやって、更新されることもなくカレンダー通りにすぎていた。そして彼にはいつも、時間がなかった。
昨日は深夜の一時に久しぶりにひとりで外を歩いた。公園の大きな池に沈みかけの半月が大きく光っていた。とても優しくてさびしい姿をしていたその月は、歩いても歩いても私を見ていた。10月上旬の夜はすでに寒く、台風が近づいて来ているのか風が妙に強い。木々が揺れ、湖面がざわつき、早く家に戻らなきゃと
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