傷跡/島中 充
前はチンシャブのうまいオンナさ」 別れの言葉だった。
少女はカッターを握りしめ手首を見ていた。死にたくはない。 手首を湯船に浸けると湯が真っ赤に染まり、 体はだんだん白くなっていくだろう、美しく。愛されることのない醜い私から汚れた赤い血が湯船に広がるだろう、しかし私は死なない、絶対に死なない。少女は思った。愛するのは、世の中ではなく、男や親でもなく、生きる事でもない。私が愛するのは手首に残るリストカットの傷跡になるのだ。 誇らしいタトゥーとして 自分が自分であるための奇妙な拠り所なのだ。死んでいないという、生きている証なのだ。
カッターを握りしめ 少女はためらっていた。ためらいなが
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