傷跡/島中 充
 
ながら確かめるように額の傷跡に触ってみた。得体のしれない思いが津波のように押し寄せた。かくまっていた過去の悲しい思いに飲み込まれ、耐えてきたもの、我慢してきたものに襲われ、少女は小さく「助けて。」と呻いた。どっと涙があふれ出した。少女は赤子のように声をあげて泣いた。

付記 私の愛する少女は、声をあげて泣いた。もう自殺しないでしょう。作り上げた虚構の中で少女は自殺しませんが、地方から働きに来ていた私の店の少女は、きっちり湯船に、手首を浸け自殺しました。どうして声を出して泣かなかったのでしょう。どうして「助けて」と言わなかったのでしょう。




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