傷跡/島中 充
 

高校を卒業すると家出同然に大阪にやってきた。居酒屋に住み込みで働き始めた。少女はホールで働いていると、背の低い、若い女子なら誰にでも声をかける男の子に誘われた。その男の子がどんな男か、うすうす分かっていた。みんなから気をつけなさいと注意されていた。好きだったわけではない。ただ男友達がほしかった。誘われればホテルで抱き合う仲になった。好きだったわけではない  ただ抱いて欲しかった。
男は三十分前にホテルで抱いた少女を友達の男に紹介する奴だった。こいつならやらしてくれるぞということだ、少女には判った。好きだったわけではない。ただ 裏切られて悔しかった。悔しくて、殺してやりたいと思った。 「お前は
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