トラッシュ(覗き込んだつもりが実は)/ホロウ・シカエルボク
 
たのか彼自身もう思い出すことはなかった、ただ非情に残酷に女を切り刻んだその夜には、この上無く美しい音楽を作り出すことが出来た、彼は今日も全身全霊で歌っている、彼が手にかけた女たちの中には、まだ居なくなったことさえ気づかれていない者も大勢居る

鋼鉄のドアの向こう側で一向に終わらないノルマを抱えた工場長が250tのプレス機にワイヤーロープを掛けて首を吊った、発見されたときには首がちぎれかかっていたそうだ、足元には裏に無数の数字が書き殴られた発注伝票が一枚落ちていた、それは彼の血を吐くような努力の成果であり、そして一度も評価されることはなく葬られた結果であった、機械油と大量の血液、そして垂れ流され
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