トラッシュ(覗き込んだつもりが実は)/ホロウ・シカエルボク
 
欲望に塗れる頃には身体が自由にならぬほど太っていた、汚水の中で彼はすべてのものを呪いながら惨めに死んで行った、もの言わぬ彼の姿はまるで排水溝の賢者のようだったが、すぐに形を無くして記憶の海のようにねっとりとうねる水の中に落ちていった

ストリートミュージシャンが喝采を浴びていた、彼は美しいラブソングをたくさん作ることが出来た、そしてそれを美しく演奏する技術も持ち合わせていた、彼がギターを爪弾いて歌い出すと誰もが脚を止めてうっとりと聴き入った、彼の声は蜂蜜を落とした珈琲のようにちょうどよい苦味と甘みを持っていた、そして彼は真夜中に何人もの女を殺している殺人者でもあった、始まりがどんなことだったの
[次のページ]
戻る   Point(2)