墓参/MOJO
 
しかなく、彼女たちは、正月を神式で祝い、葬儀は仏式で執り行う、ごく標準的な習慣のなかで育った男たちを伴侶に持った。そうして、太一たちの代になると、イエス様に対する信仰は、だいぶ薄まってしまった。
 母方の親族が一同に会すると、叔母たちは、神に祈りを捧げ、賛美歌を合唱する。そこが教会なら問題はないが、敬虔な彼女たちは、辺りを憚らない。長姉のえい子の墓には、これまで数回親族が集った。それは、大抵休日だったから、他の墓にも沢山の人が参じていた。叔母たちの、芝居の台詞のような「神様……」が始まると、辺りに妙な空気が流れだし、賛美歌を歌いだすと、明らかに異質ななにかが一族の周りにたち込める。敬虔ではない太
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