墓参/MOJO
い太一やその従兄妹たちは、叔母たちの熱唱を他の墓に来ている人たちに聴かれるのが気恥ずかしかった。それでも従兄妹たちは大抵七、八人は来ていたから、恥ずかしさは、連帯でやり過ごすことができた。
太一は、背負っていたデイパックから、ハンカチに包まれたタッパーを取りだした。タッパーの中身はすいとんである。すいとんとは、小麦粉を水で溶き、練って団子状に丸めたものを、和風の汁で炊いたものであるが、そんな旧式の惣菜を墓参に持ち込んだのにはわけがある。
姉妹たちの末妹は、真澄という。その真澄の家庭が、上手くいっていない。亭主が働かないのだ。姉たちは、そんな亭主とは別れろ、と助言するが、真澄は聞き入れず
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