独り/きとり
 
か!だれ、か、?



必死で周りを見回して自分以外の誰かを見つけようとした



外の砂利を踏みしめた音が、やけに鼓膜に残る



風が痛いぐらいに吹きつける

大きな木がざわざわと揺れる音

雲が不気味なぐらい速く動いて

猫も鳥も近所の人も、いない

車も、自転車も、通らない



ざわざわ、ざわざわと木の揺れる音









あの時、世界には確かに私しかいなかった

今に私も不意に砂みたいに崩れるか

幻のように掻き消えてしまいそうだった



その後はよく覚えていない。

気がついたらお寺の境内
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