神/山人
 
あるという。
白石が壇上から見えなくなるとホール内の参加者から落胆の吐息が漏れた。
サンダル履きでベトナムズボン、シャツも作業着の薄手のものをだらしなくズボンの上に下ろしている。眼鏡をかけ、年の割には多い白髪交じりの髪を掻き分け、ぺたぺたと壇上に上がった。
無精髭もだらしなく生えており、とても神と呼べる高尚さは微塵もない。
「皆さん、こんばんは。今ほど紹介にあずかりました、私が、神、です」
失笑が渦となり、ホールに響いた。
「なぜ、失笑するのか、私はとても悲しんでいます」
神と呼ばれる人物、年齢的には六十代後半であろうか、よく見れば痩せ型でシャープさも備えている、それなりの硬い外殻を
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