神/山人
「・・・」
「神」は俊介の話が終わった後も一心不乱に速記していた。
「なるほど、するとあなたは御自分にはまったく非がないとおっしゃるわけですね」
「まぁ、会社については私の不徳とする部分もあるでしょう、ただ、妻の不貞に関しては私には落ち度はない・・はずです」
「神」は次第に目つきが鋭くなっていた、まるで俊介を悪者を裁くかのような目でにらみつけた。「神」は立ち上がり、吐息を吐き、再び冷静な口調になり話し始めた。
「鈴木さん、あなた、佐伯孝子さんという方をご存知ですかな?」
「ご存知も何も、街で話しかけたのが佐伯さんなのですよ、今日は見えていませんでしたね」
「ええ、今日は家に居るの
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)