湯豆腐と冷奴/salco
 

小学二年生の私は食べ過ぎたか冷やしたかでお腹を壊した。記憶にない腹
痛という意味に於いてはこれが初食あたりで、落ちたら地獄の非水洗便器
にまたがったまま自分は死ぬのではないかと、これまた初めて思った。と
ても一人で耐え抜けそうになく、これも初貧血を起こしかけて中から父に
助けを求めた。どんな風に助けてもらったかは忘れてしまったが、二度と
冷奴は食べまいと心に誓ったのだった。
 木造校舎の便所を漂う赤痢の面影にまだ白い消毒液を撒いていたような
時代、何を食おうが己の殺菌パワーと消化力でねじ伏せて来た子がこうな
るのだから、冷奴は子どもの胃腸に適した食べ物ではないのかも知れない。
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