湯豆腐と冷奴/salco
 
方が得策と考えたからだった。ギュウ詰めの白飯と丸めたアルミ
ホイルしか見えない兄や弟の分も詰め直す。他人の目が及ぶ食事に美意識
は欠かせない。

 そんなわけで、大きなアルマイトの両手鍋の中心に、伏せた茶碗か何か
を台にして蕎麦猪口か湯呑を置く。そこにドボドボと醤油と山盛りのかつ
お節を入れ、すり生姜少々と小口切りの白葱をドカドカ入れる。周囲に水
を張り、銀ダラの切り身と絹ごしを入れて火が通れば出来上がり。
 かつお節は削り器を足裏で挟んで掻いたもので、子ども達や母がカシカ
シ削ると抽斗には粉しか溜らないのに、父だとヒノキのかんな屑みたいに
立派なのが出来た。
 私は、タラと
[次のページ]
戻る   Point(5)