火の河の畔で/まーつん
 

  水の流れに飛び込んで
  焼け死んでいった
  無数の命を

  焼夷弾の油が
  川面を覆って燃え上がり
  夜を紅く染めた光を

  お前は
  見たのか
  天野原を流れていく
  死者の魂が
  砕け放つ光を


 浮かれ騒いだ夜祭の
 手持無沙汰な帰り道

 奇妙に空虚な
 気分で見上げた
 星空を焼く火の河から

 ぽたりと、一粒
 僕の手元へ
 滾る滴が落ちてきた

 無限の空間を
 かすめてきたのに
 ちっとも、冷めていない

 その
 猛々しい熱で
 掌の皮膚を食い破り
 内側へと潜り込んでいく
 一粒の
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