火の河の畔で/まーつん
 
 血の流れにも思えた

 よく見ると
 沢山の
 炎の滴の集まりで
 其々が、己を燃やしながら
 ひとすじの流れを
 作っていたが

 広大な
 夜の世界の
 天蓋にあっては
 一本の糸のように
 か細く、頼りなく

 燻る眠り
 安らぎのない
 夢となって
 何処かにある筈の
 結末へと向かっていた

 それが
 想像の作り出した
 幻に過ぎないと
 気付きつつも

 あれは
 いったい何だろう、と
 胸の内に、答えを探した

 水音を背景に
 耳元で囁く
 鈴虫の声

  お前は
  知っているのか
  火の河と化した

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