◆ Terence T D'arby best selection ◆/鈴木妙
 
ど歩き、丁字路にぶつかった。正面にコンビニがあって、その右に隣接する古書店≪杏仁堂≫は高校生のときよく利用した記憶がある。主人がおしゃべり好きでよく近代文学の話で盛り上がった。そういえばここは亜衣に教えてもらったのだった、と盗み見た彼女の表情はなんの感慨も映していないようだ。ぼくたちはその脇の路地に進んだ。もうずっと知っている道で、ぼくが住んでいた近隣地域というわけではないけれど、古本を漁りがてらよく散歩をしたのだ。さらに行くときつい傾斜の土手で行き止まりになっており、その向こうが市境、地下鉄東山線の車庫になっているはずだった。ただ、一目散に石階段を駆け上がった茜が
「はい、このようになっており
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