◆ Terence T D'arby best selection ◆/鈴木妙
 
た居間、寝室、風呂、キッチン、トイレなどは洋館の体として比較的ふつうだった、が、応接室がこのような特殊空間になっている、つまり、ぼくたちがなにかしなければならないとすればここであって、だったらなるたけ狭いほうがいい。でも広い。ぬるい風が吹いて少しだけ涼しくなる。
「ちょっと歩いてみましょう!」
 と声を弾ませて茜が勝手に歩きだす。道を渡り市境へ向かう彼女の、ブートカットパンツの裾の揺れを見せつけるような歩き方は上機嫌っぽい。それを並んで追うぼくと亜衣は情報交換をする必要があると思う。声をかける。
「あのさ」
「はい」
「どう思う?」
「なにが?」
「これ市外まで続いてたらちょっと厄介
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