貴種流離譚 (きしゅりゅうりたん)/……とある蛙
 
逃げ延びる

二人で糧を、と腰掛ける
その時、突然、入れ墨男
猪飼の翁が現れて
二人をどつくは蹴り倒すは
 で
年端もいかぬ兄弟は
哀れ食い物を奪われる

二人をなめきり、間抜けな翁
問われて自らの名乗りを上げる

  やましろの猪飼いじゃ と

糧を奪われ 腹空かせ
玖須婆の河を逃げ渡り
ようやく落ちた
針間のシジム家

そこで卑しい牛飼馬飼
そのまま二人は逼塞し

それから幾年兄弟は
乞食のような粗末ななり
いくらもらえず粗末な糧食


ところが
シジムの邸の祝い
新築の祝いが催され
しかし、二人は竈のそば
火炊き童子の灰かぶり
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