陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
ひたすら眠っていた。
(ある意味すごいよなこの人)
北が、太郎に対する若干の尊敬の念を抱き始めていることに、爆睡中の太郎が気づかなかったことはいうまでもない。
実のところ、北は、寝るどころではなかったのだ。横になったかとおもえば、腹がグルグルゥ、と鳴き出し、強烈な便意が彼を襲ってきた。あわててテントの外に出て、トイレにしゃがむ。トイレといっても、地面に穴を掘っただけのものである。そこにしゃがんで、雨に濡れながら、ウンチョスを放出する自分の惨めな姿を、ふる里の父や母や恋人が見たらどんなにか落胆するだろう(こんな姿、父や母や恋人にぜーったいに見せたくない!)。
医者の息子で育ちの良す
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