陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 
良すぎる医学部一回生の北にとって、この体験が、後日、彼に
一種のふてぶてしさを与え、一種の野性味を与えた、と太郎は思った。が、北本人はもちろん、周りの誰もそんなことは思いもしなかった。
七月三○日 また雨 出発
 ヤッホー、また沈殿、お休み、と早とちりした太郎は、登山靴をのーんびりと掃除をしていた。
「おい、守田、出発するぞ」
「は? 出発?。雨こんな振っているのに、何で? 俺たちを遭難させたい訳、君は?」
「ソウナンです。なーんて俺が言うと思うか、この!」
「ざ、残念。いま一歩で、最悪ダジャレ聞けたのに」
 午前七時三○分出発。三峰岳、間の岳、農鳥岳とひたすら歩く。
 雨は土
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