陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 
平着、一九時五分。
 北俣岳から熊ノ平までは、ダラダラの尾根道なのだが、北君が、頻繁に「キジ撃ち行きたいです」を連発し、他の三人もその度にストップして彼のキジ撃ち終了を待っていたため、えらく時間がかかってしまったのだ。
 どうも、北君、七月二一日に、太郎とコッソリ飲んだ「ナポちゃん雨水ボウフラ入り」が今ごろになって効いてきたらしい。その顔には、「もう僕、ゲリビチのビリビリです」そうはっきりと書かれている。
「北、なんか調子悪そうだな?」
「い、いえ、僕、大丈夫です」
「おー北君、我慢強いね」
「はい、よくそう言われます。ゼイゼイ」
 肩で息をしながら北が応えるのをあざ笑うかのように、
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