陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
者たちを押しのけ、そのうちの一人にシャッター押しを無理矢理押しつけて、パーティ四人で写真に収まる。背景には、雨に煙る南アルプスの山々。
この四人がいる空間に悪臭が充満しているのか、四人を中心に半径二メートル以内に他の登山者はいない。この日の塩見岳頂上を俯瞰すると、きっとそこだけが円形脱毛症のように丸く空いているだろう。
N大山岳部のパーティ四人は、何も頂上での眺望を愛でるために遠路はるばる南アルプスくんだりまでやって来たのではない。
じゃ、何のため?
そう、突っ込まれても、さぁ? と首を捻るばかりの鈍さが、彼らの持ち味だ。
塩見岳山頂を後に、北俣岳からコウモリ岳を経て熊ノ平着
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