陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
ぇんじゃないだろうな)
一抹の不安が太郎の胸をよぎった。
行ったり来たり、をうんざりするほど繰り返し、やっぱ山岳部ないんだ、そう諦めかけてサークル長屋を出ようとしたそのとき、出入口右側にある部屋のドアがサッと開いた。
そこから出てきたのは、伸び放題の髪と髭、かつては白色であったろうことを彷彿とさせるコットンシャツ、あちこちに穴の開いたGパンの真正ホームレス?
開けられたドアには、英語で「N・University Alpine Club」と書かれていたのだが、日本語モードの山岳部しか頭になかった太郎は、その「N・University Alpine Club」が、「ここですぅー、山岳
[次のページ]
戻る 編 削 Point(1)