陽子のベクトルは太郎を指向するのか/草野大悟2
 
ん、びー、うぇーん、と大きな目からぽろぽろ涙を流しながら、太郎の胸で泣き続けた。
 陽子は、太郎の肩くらいの身長で、、顔が太郎の胸にしっくり納まる条件を完備していた。(俺の胸で泣きな、とはいってもなぁ、こんな公の場所ではなぁ。もう少しTPOを考えて欲しいぞ、俺的には)そう思いながらも、泣き続ける陽子の肩を、そっと抱いている太郎であった。
 太郎は、陽子が意外と小さくて、その肩も意外とか細くて、その胸は意外と大きいことを実感しているらしかった。
 彼女のこれまでの人生で、これほど大泣きしたのはおそらく初めてだろう。陽子の泣き方はとてもぎこちなく、保育園児並みあるいは免許取り立て若葉マークの泣き
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